お気に入りの書籍紹介『民俗学への道』

こんにちは、Gaji-Labo 山岸です。Gaji-Labo Advent Calendar 2014 11日目のエントリです。

本日ご紹介するのは、宮本常一氏の『民俗学への道』という本。これは武蔵野美術大学短期大学部通信教育課程用に編集された教科書なのです。そのため、一般の書店などで手に入るものとはちょっと構成が違っているようなのですが、もう長いこと愛読している本のひとつです。

この本のまえがきは1955年に書かれているので、自分が生まれるよりずっと前に書かれているもの。しかし、真摯に人々の営みを見つめる視線ははっとするほど色褪せないと感じたりするのです。

書籍写真
決して裏切らないずっと力になってくれる愛読書

現代に重ねて読む

本書から特に心に留めておきたい箇所をいくつか引用します。

そこに、生きている現実の社会をとらえて行こうとするものの心構えがなくてはならぬと思っている。
そして、ものを見きわめて行く方法と考え方は、たえず、自分で新しくして行かねばならない。

宮本氏は、民俗学の限界を自覚しながら、追究するものの実態をつかむ過程で大事な問題を見落としてはならないと言います。また、珍しい習俗を見つけ出すことではなく、なぜその珍しいものが残ったのかにフォーカスすべきであり、そもそもそれをなぜ珍しいと思うのかが問題なのだと述べています。

それは現代のビジネスやデザインの世界でも、まるっと同じことが言えるのではないでしょうか。What の先には Why があります。そこには必ず人間がいて、Why には人間の Thinking と Feeling が付随していることを、民俗学者は真正面から理解しているのです。

単に行事の起源や変遷をしらべるだけなら、民俗保有量だの、村だのということは問題ではない。そこにどんな人が住んでいようと、どんな村であろうと、のこされた行事だけが問題にされて来る。
しかし、それだけで民俗文化を解明してゆくことはむづかしい。民俗行事は人のつくったものであり、民俗行事のために人が生きているのではない。

What である民間行事=システムは、人間によって必要とされたものだから Why を経てそこにあります。システム上に残されたデータや行動ログだけがそこにあっても、それだけですべてはわからない。定量的な評価と定性的な評価がお互いを照らしあうから、Why が見えてくるのです。

その時、中心にあるのはシステムではなく人間です。

集団のタイプを決定するのは、集団のもつ目的とこれを維持し発展させてゆくエネルギーの中にあると思う。それがまずさぐりあてられなければならない。集団としてのエネルギーの凝集が弱まって来ると、目的もぼやけて来、集団自体の解体をおこすものである。

ここでいう集団=コミュニティを今の自分の身近な単位に置き換えても、なんら違和感はありません。私たちはみんな頭を悩ませながらコミュニティや組織のデザインをしている。それはエネルギーの総量とベクトルを整えるためのデザインなのでしょう。

古くさいかもしれないけど、裏切らない

洗練された研究や方法論がたくさんある現代ですが、探求・研究をする姿勢や見つめるべき対象はずっと変わっていないのかもしれません。今デザインの世界でさかんに取り入れられている人間を理解するための方法論等は、民俗学の歴史の中から生まれてきているともいえそうです。

私は人間中心設計専門家として活動させていただいているのですが、昔からずっとこの本を愛読していることが考え方に影響しているのだろうと思います。若い頃からそうした愛読書を持てていることは幸運だったのかもしれませんね。

本書は教科書ということでちょっと特殊なものですが、ほぼ同じ内容と思われるものは手に入るようです(中身を確かめてないので正確なことは言えませんが)。

ふと、めまぐるしく流行り廃ってゆく目の前のバズワードに疲れたら、こうした本を読んで静かに心を鎮めてみるのもオススメですよ。古くさいかもしれないけど、裏切らない。そういう本は、ずっと力になってくれます。

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投稿者 山岸 ひとみ

主にサービスデザイン案件や新規事業・スタートアップ案件を担当し、サービスデザイナー/プロセスファシリテーターとしてビジネスとデザインが密接な領域で活動。柔軟なプロセス設計を持ち味にして、チームの成果と成長に貢献しています。社内ではメンバーが健康に働ける環境の整備やひとりひとりの成長のためのしくみづくりなどを担当。おいしいコーヒーを買ってくる担当もやってます☕