お気に入りの書籍紹介『無形民俗文化財が被災するということ』×『東北のオカザリ』

こんにちは、Gaji-Labo 山岸です。Gaji-Labo Advent Calendar 2014 16日目のエントリです。

今回ご紹介するのは『無形民俗文化財が被災するということ―東日本大震災と宮城県沿岸部地域社会の民俗誌』。311震災で被災した無形の民俗文化財調査をまとめた本です。

個々の地域社会に継承されてきた無形の民俗文化財はそもそも震災前のコミュニティのなかでどのような存在だったのか、そして復興過程にあっていかなる意味を持ちうるのかというのが一つの問題意識になっている。

無形民俗文化財のありようを記録・分析して社会的意義を考察している、非常に興味深い内容なのです。

書籍写真
未来に向かって生きていく中で何が大事かを考えるヒント

どんな角度から見ても興味深い

本書で述べられているのは、文化財の復興の過程であったり、社会的な文脈を持ったコミュニティの再建であったりするのですが、そこから読み取れるものには自分たちの足元を見つめるための大事なヒントが詰まっています。

私が気になった箇所にいくつか引用します。本当は全文引用したい勢いなのですが。

しかし、被災地で落ち着いてきたかにみえる現状は、あくまで復興政策下のものであって、被災地の人びとが望む自立した暮らしではない。現在でも聞かれる「被災地は何も変わってない」という声は、このことを端的に表している。
では、なぜ私たちは「復興」が前に進んでいると思ってしまうのであろうか。それは、災害だけを軸に被災地を見ているからである。たしかに、津波や震災直後のがれきだらけの映像はインパクトがあり、そこに引きずられてしまいがちであるが、被災地の人びとにとって一番ダメージを与えたのは、これら表面的なものではなく、暮らしの基盤が根こそぎ破壊されたことであった。つまり、災害だけでなく、暮らしの再建を軸に被災地をみていくべきだといえる。

まず見るべきは「人」とその「暮らし」であることを痛感します。

これに対し、民俗芸能や祭礼が再開するというのは、一人の個人によって決断されるというものではなく、むしろこれに関わる複数の人びと、その背後の地域コミュニティやさらに外部との関係によって決められていく。それゆえにこそ、地域コミュニティ全体を見据えつつ無形民俗文化財をめぐる社会関係がどのように再編されていくのかに着目する必要があるのである。

「個別性」と「全体性」、またそれを見つめる側のフィルタリングや情報消費など、震災に関わらずとも自分の身近なところについても考えさせられます。

究極的には担い手が失われてしまえば、つまり継承がうまくいかなければ、その文化財は消滅する。仮に人がいたとしてもどこに、どのようにして集まり、実践されるかが解決されねばならない。つまり、所与の社会空間の利用・管理について地域社会によって承認される(社会)組織こそが無形民俗文化財の維持・発展に欠かせないものであることを指摘しているからである。

無形文化財と地域社会という関係を見ながら、文化・マインドと会社組織という組み合わせなどに思いを馳せることもできます。

もちろん文脈は大きく違いますが、何かしら通じるものはあって、ありとあらゆるコミュニティに共通する「まんなかにある何か」みたいなものがなんなのか、考えるきっかけにもなります。

理屈よりも、思い入れが強い

私自身が東北出身であることもあって、少し思い入れが強い部分があるので、あまり多くを語るよりも読んでほしい気持ちだけ伝えたい感じがありますね。

ついでと言ってはなんですが、合わせて紹介しておきたいものに『東北のオカザリ―神宿りの紙飾り―』があります。こちらは多摩美術大学美術館で出している図録です。

こちらからも少し引用をしておきます。

なぜなら外見が立派な場所に戻ったとしても、そこに暮らす人々や自然に活力と希望がないと無意味だからである。それらを担うのは世界のどこに行っても同じことが言えるが、文化や芸術がもたらしてくれる活きた社会だ。いくら体裁の整った伝統文化や歴史的伝承があったとしても、過去の遺物や形骸化された記録であってはならない。

私たちが未来に向かって生きていく中で、何が大事なのか。これらの本を読み進めるうちに、自分の中に何かが芽生えてくるように思います。

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投稿者 山岸 ひとみ

主にサービスデザイン案件や新規事業・スタートアップ案件を担当し、サービスデザイナー/プロセスファシリテーターとしてビジネスとデザインが密接な領域で活動。柔軟なプロセス設計を持ち味にして、チームの成果と成長に貢献しています。社内ではメンバーが健康に働ける環境の整備やひとりひとりの成長のためのしくみづくりなどを担当。おいしいコーヒーを買ってくる担当もやってます☕