お気に入りの書籍紹介『書物の歴史』

こんにちは、Gaji-Labo 山岸です。Gaji-Labo Advent Calendar 2014 23日目のエントリです。

アドベントカレンダーも残すところあと少し。紹介したい本は数ありますが、今回は厳選した中から『書物の歴史』をご紹介したいと思います。

原著は1954年の刊行だそうで、私の手元にあるのは1991年に改版・訳し直された新バージョンのものです。

書籍写真
書物の進化は人類の進化

書物のことがひととおりわかる

21日のエントリでも少し触れましたが、山岸は本を作る学科で学んでいましたので、本というものについての思い入れが深いのです。

本書は紙、文字(フォント)、印刷、装幀、挿絵、出版、販売とその普及に至るまで、幅広く知ることができます。淡々と書かれているので、こうした内容に興味のない方には飽きが来る部分があるだろうと思いますが、逆に好きな方にはたまらない内容だと思います。

そもそも書物って何?

石版の時代から、今のような電子書籍の時代までを眺めてみると、書物ってなんだろうってわからなくなることがありますよね。

本書は1954年に書かれた本ですので、当時すでにあったマイクロフィルムや磁気録音などについては触れられていますが、インターネット出現以降のあり方についてはもちろん書かれていません。

書物とは何か? ふつうの辞書を開いてみると、《製本され、あるいは仮綴じされて一巻に集められた印刷した紙片》と定義されている。たしかに、書物は今日われわれの目にそのような形のもとにあらわれている。しかしいつもこんなではなかった。そしておそらく将来においては他の種類の《書物》があらわれて、今日用いられている唯一の種類の書物と競争し、これに取って代わりさえするかもしれない。

そう述べられている通り、現代では様々な媒体が存在しています。しかし、以下のような内容を見れば、私たちの生活になじんでいる様々な媒体のことをすんなり思い浮かべることができると思います。

いわく、《ある知的与件をあらわす符号をその上にしるした、臨機応変に折りたたんだり巻いたりすることのできる、ある材料とひろがりとからなる一つの支え》。また書物はこのようにして永続する忠実な、人類の客観化された記憶の一種であって、個々の人間の主観的・一時的な忠実でない記憶を補うものであるともいえよう。

本だけが書物ではない

現在、本は売れないし本の時代は終わった、という話を耳にすることがあります。慣れ親しんだ書籍という形や出版業界の売上という意味では、そういう部分もあるのかもしれません。

けれど、私の好きな「書物」は「客観化された記憶」であり、書籍の形に限らなくてもいいのです。一部の方は山岸が「アーカイブ」というものを愛してやまないのをご存知だと思いますが、その理由も同じところにあります。

記憶や知識、個人または集団の経験のようなものたちが可視化され、保存されること。私の愛することはそういうことなので、本も図書館も Wikipedia もインターネットも誰かの日記も、みんなまとめて好きなのです。

書物は進化している

この進化はまだ終わってはいないし、人類そのものの進化とともにしか終わらないであろう。

本書では、人類の進化と書物の進化が不可分であると述べられています。技術はあらゆるものの形を変えます。書物も、私たちの生活も。

書物がこんなふうに進化してきたんだなぁと思うと、自分たちの関わっている仕事の一部が将来の書物の形につながっていくのかもしれないという感じがして、気が引き締まります。

「これまで」を知ることで「これから」を作るヒントになる

新しい媒体の出現でいわゆる本の形が損なわれるのを嫌う人もいますが(私もさみしくはあります)、その先に生まれてくるものをどうよくしていくのかを考える建設的な作業を怠ってはいけないなと思っています。

現在われわれが知っているような形の《書物》は、紀元二〇〇〇年には、もっと実用的な形の知識伝達具によって取って代わられるであろうと。しかし、要するに、それは書物に対するまた一つの毀損にすぎないであろう。書物は四万年ないし五万年にわたるその長い歴史の上で、すでに他の多くの毀損を受けてきたのである。

先日、原田が『セマンティック HTML/XHTML』を紹介していましたが、私もあの本が大好きですし、重要な内容だと思っています。個人的にセマンティックウェブの考え方やメタデータを大事にしたいと思うのは、それらが書物の進化の過程上にあるものだと考えているからにほかなりません。

私たちの営みが「これから」の何を変えていくのか。本書『書物の歴史』は、そんなことを考えるきっかけになってくれるのではないでしょうか。

関連リンク


投稿者 山岸 ひとみ

主にサービスデザイン案件や新規事業・スタートアップ案件を担当し、サービスデザイナー/プロセスファシリテーターとしてビジネスとデザインが密接な領域で活動。柔軟なプロセス設計を持ち味にして、チームの成果と成長に貢献しています。社内ではメンバーが健康に働ける環境の整備やひとりひとりの成長のためのしくみづくりなどを担当。おいしいコーヒーを買ってくる担当もやってます☕