持続可能性を考えたデザイン戦略が必要だったプロジェクトを振り返る・後編

福祉施設のデザイン戦略の事例を思い出し、あらためて当時どんなことに気を付けてデザインを進めたのかをまとめてみる試み。前編ではオペレーションの持続可能性についてまとめましたが、後編の今回は店舗やパッケージデザインそのものの話題が中心です。

価値も内容もわかりやすく伝えなくてはいけない

就業支援の場である福祉施設にとって、オペレーションの持続可能性は非常に大事なトピックです。一方で、そうした福祉施設の内情を知らない方々にとっては、他のお店のものと変わらない店舗であり商品でありカフェメニューとして捉えられる状況もあります。

自主生産品の売上を伸ばし、施設で就労する方々の工賃を上げるために、地域に愛される店舗や生活に取り入れて心地よいパッケージデザインを工夫する必要がありました。

オペレーション上の種々の制限とパッケージデザインのバランスをどこに落とし込むかは非常に難しい課題でしたが、どんなことに気を付けていたのかを書き出してみたいと思います。

必要な表示項目の伝わりやすさ

まず、かわいらしさや美しさ以前に、食品衛生法や薬事法について知らなければパッケージのデザインができません。また、重要な情報である賞味期限や保存方法がしっかり伝わる必要があります。

  • 賞味期限や保存方法が確実に伝わる
  • 商品についての注意事項が確実に伝わる
  • 法律で禁止されている内容が含まれていない

そもそもパッケージに使用できる材質なども縛りもあるため、実現可能性とコストの折り合いを付けながら落とし所を探りました。

商品内容(魅力)の伝わりやすさ

商品の内容や魅力を伝えるデザインというのは、ここまで挙げてきたたくさんの項目の中でいちばんわかりやすい項目かもしれません。むしろこれだけがデザインの対象であると思われている向きもあるかもしれません。

  • それが何であるかが間違いなく伝わる
  • どう「よい」のかの魅力が言語で伝わる
  • どう「よい」のかの魅力が視覚で伝わる

デザインに関心のある方々にとって、この項目についての説明は不要かと思います。スコープをこの項目だけにグーッと縮めれば、私が手がけるよりもずっとすばらしいデザインを行うデザイナーの方々がたくさんいらっしゃると思います。

しかし、この項目だけに注目してデザインを行うことと、ここまで挙げてきたすべての項目を考慮してデザインを行うことはまったく別の意味を持ちます。最終的にアウトプットされる視覚的なデザインをどのような背景で組み立てていくべきなのか、造形を主とするクリエイションに加え、ビジネスや課題を理解した戦略策定が必要です。

かかるコストとわかりやすさのバランスは商品ごとにも違います

実際、オペレーションとコストのバランスを整理すると商品パッケージ単体で課題を解決することは難しいという現実があり、付随するPOPや説明書きで担保する方向でアイデアを練っていきました。

また、パッケージだけでは担保できない商品の写真を見てもらうために月ごとに商品のチラシがプリンタで簡単に出力できるようなテンプレートも考え、運用してもらうようにしました。

ダイレクトにおいしさのビジュアルを伝えるため、商品の物撮りも担当しました

オペレーションの持続可能性と視覚的なデザインを過不足なく実現できたのかと言われれば、100%ではないと感じます。しかし「なんのためにやっているのか」をぶらすことはなかったと思っています。

ブランドの認知されやすさ

商品の伝わりやすさに加えて、ブランドとして認知してもらうことの重要性は、デザイナー職でない人たちの中でも広く知られていると思います。

  • 「見たことある」という状態を作る
  • 「ここの商品なら買おうかな」と思ってもらえる
  • 横展開してもコンセプトが同じであると理解してもらえる
  • 身近にいつも存在していると感じてもらえる

「ここが作っている商品っていいな」と思ってもらえることで、ふとしたときに想起してもらえたり、手に取ってもらいやすくなったり。特に福祉施設の生産品は、商品との出会いが福祉の活動への理解に通じるきっかけになるという意味も持ちます。

福祉施設と地域との関わりは、やさしさだけでなく難しさを抱えていることも多いのではないでしょうか。そんな中で、いかに接点を増やして理解を広げていくか。ブランディングとして外せない要件でした。

何よりも「現場が動けるか」が大事

オペレーションの持続可能性と視覚的なデザインを過不足なく実現するには、表層的な感覚だけでは足りません。個々の課題に対しての専門人材が定期的に状況共有をして、優先順位を付けていくことが必要です。

パートナーであるおおきな木・加藤さんがていねいに行うヒアリングをベースにして、協働の場を何度も設けながらデザインプロセスを進めました。プロセスとして重要視したことは以下のような内容です。

  1. 現場で動く人の声を直接聞いて協働するための場を設け、現場の人が何を考えているかをしっかり聴く
  2. 自分たちが変えていくんだという意識が育つ協働の場になるよう工夫する
  3. ブランドとして実現したい世界と毎日の作業がどうつながっているのかがイメージできるように可視化する
  4. ユーザーにあたる店舗や商品を購入するお客さんが生活の中に取り入れたいと思ってくれる商品内容・パッケージを検討する
  5. コストのかからない方法でプロトタイピングを行い、実際にしばらく使ってもらって調整してから量産する
  6. 実際に現場でオペレーションしているところを時々でもいいから見に行く
シュミレーションやプロトタイピングは何度も何度も行いました

オペレーションの持続可能性が保たれているということは、現場の人たちが自信を持って動けている事実につながるのではないでしょうか。私にとって、現場の人が働く様子やお客さんと触れ合っている様子を見るのはとてもうれしいことでした。

過去案件のデザイン戦略を言語化する試み、どんどんやっていきたい

記事2回分に渡り、あらためて当時どんなことに気を付けてデザインを進めたのかを思い出し、表層的な部分だけではないデザイン戦略の部分に何があったのかを言語化してみました。

当たり前のことなのですが、「なんのためにやるのか」「なぜやるのか」「それが現場の手元とどうつながっているのか」を言語化することは重要だなと改めて思いました。すこし時間が経ってから振り返ると、当時とは違った言葉になるため、それがまたいいのかもしれません。

これからも過去の案件を掘り起こして言語化してみる試みを続けてみようと思います。公開できるものばかりではないのでブログ記事にするかどうかはわかりませんが、それをもとに今や未来にすこしでも活かしていけるよう、コツコツと積み上げていこうと思います。

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投稿者 山岸 ひとみ

主にサービスデザイン案件や新規事業・スタートアップ案件を担当し、サービスデザイナー/プロセスファシリテーターとしてビジネスとデザインが密接な領域で活動。柔軟なプロセス設計を持ち味にして、チームの成果と成長に貢献しています。社内ではメンバーが健康に働ける環境の整備やひとりひとりの成長のためのしくみづくりなどを担当。おいしいコーヒーを買ってくる担当もやってます☕